3大合併症以外にも注意する合併症が多い
骨を作る細胞の機能低下を招きやすい
高齢になると、骨粗鬆症で骨折する人が増えます。最近では、糖尿病の人も骨折しやすいことがわかってきました。
その理由の1つは、インスリンの働きが衰えると、骨を作る骨芽細胞の数や働きが低下することです。わかりやすいように、骨の構造を鉄筋コンクリートにたとえてみましょう。骨芽細胞は、鉄筋部分に相当するコラーゲンという物質を作ったり、コンクリートの役割を持つカルシウムやリンなどのミネラルを沈着させたりします。インスリンの作用が低下して骨芽細胞の働きが衰えると、鉄筋もコンクリートも十分に作られず、骨が弱くなってしまうのです。
最近では、血糖値が高くなると、摂取したカルシウムが尿から排泄されてしまうこともわかっています。カルシウムは、筋肉や細胞の活動にも使われています。体内のカルシウムが少なくなると、それを補うために破骨細胞が骨を溶かします。そのため骨がどんどん細く弱くなってしまうのです。
こうしたこと以外にも血糖値が上がると血液中にAGEという物質が増えます。AGEの血中濃度が高まると破骨細胞の働きが活発化し、コラーゲンの構造を劣化させてしまうのです。
つまり骨の質が悪くなるのです。骨のコラーゲン線維は、「架橋」で結ばれて、骨の構造を補強しています。この構造によって、骨は強くしなやかに保たれているのですが、AGEが増えると、架橋が劣化して強度が低下し、骨は折れやすくなるのです。糖尿病には、体質や自己免疫に起因する1型糖尿病と、生活習慣病の代表である2型糖尿病の2つがあります。血糖値が高くなるのはいずれも同じですが、骨への影響は違います。
高血糖でAGEが増えたり、尿からカルシウムが排泄されたりするのは、1型も2型も同じです。1型の人は骨量も骨の質も、両方とも低下する特徴があり、糖尿病でない人に比べて7~12.3倍も骨折しやすくなります。
一方、2型の人は、太っている人ややせている人、インスリンの分泌量が少ない人やそれほど減っていない人など、さまざまです。肥満の人では骨密度が高い人もおり、骨量は必ずしも減っていない点が1型と異なります。それ
それでも、2型の人も糖尿病でない人に比べて、1.4~2.3倍も骨折しやすくなります。骨の量は減っていなくても、高血糖のために骨質が悪くなって骨強度が低下しているのです
目に起こる網膜症や、手足に起こる神経障害といった合併症も、糖尿病の方が骨を折る一因となります。
網膜症が進むと視力が低下するため、暗いところで足もとがよく見えなかったり視界がぼやけたりします。神経障害が出ると、足の感覚が鈍り、歩行に支障をきたすことも少なくありません。また、低血糖状態になって意識がもうろうとして、判断が鈍ることもあります。夜中にトイレヘ行こうとして立ちくらみ(起立性低血圧)を起こして転んだり、階段から落ちたりして折することもあります。
このように、糖尿病の人は、健康な人よりも骨折する危険性が非常に高いのです。
では、少しでも転倒や骨折を防ぐには、どうしたらいいのでしょうか。まず、糖尿病の治療をきちんと受けることと、血糖値を下げて合併症を予防すること。そのうえで食事、運動、日光浴など、骨の健康に配慮した生活をすることです。頻繁ではなくていいのでコラーゲンを摂ることも必要です。
食事では、葉酸やビタミンB6・B12をとること。これらのB群はホモシステイン(動脈硬化を引き起こすアミノ酸)の増加を防ぎ、動脈硬化と骨質の劣化の予防に寄与します。カルシウムの吸収を助けるビタミンD、骨を強くしなやかにするビタミンKも大事です。
ビタミンをたっぷり摂るには吸収力がアップしている酵素入り青汁がおすすめです。食前に飲めば糖の吸収も穏やかになります。
カルシウムを摂取するには、カルシウムを多く含みながらカロリーの低い無脂肪乳がいいでしょう。過度の飲酒や加工食品、炭酸飲料をとりすぎないことも大切です。
運動は、日光浴も兼ねて毎日30分はウォーキングを行いましょう。太陽の光を浴びれば、体内でビタミンDを作るのに役立ちます。